夢幻巣窟 ~むげんそうくつ~

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プレミアム バンダイ デアゴスティーニ
 

【小説】扉を開けて(4)

扉を開けて(4)     作/RENJI

恋人だった涼の思い出を引きずったまま、一歩も前に進めない由菜。
ある日、由菜を呼び出す手紙が……1通。
放課後、待ち合わせ場所で待つ由菜の後ろから、懐かしい声が……。



 放課後の教室---------…。
 色々考えた末に、あたしは結局、手紙をくれた相手と会うことにした。
 この手紙をくれたのが誰なのか、とても気になるし。
 あたしを直接呼び出してまでの≪大事な話≫って、何の用……?
 少し不安気味のあたし顔を見て、美恵が心配そうに話し掛けてくれた。
「由菜……あたしも一緒に行ってあげようか?」
 その言葉が嬉しくて……。
 でも『うん』と言えなくて……。
「ありがとう。でも大丈夫だから……」
 あたしは、そう言って断ってしまった。
「そ、そう……。じゃあ、先に帰るね」
「うん」
 ニコッと微笑んでみたものの……。
 美恵の帰る後ろ姿を見ながら、あたしは心の中で『待って!』と呼び止める。
(聞こえる筈もないのに、ね)
 馬鹿だな、あたしって……。


 あたしの通っている高校には、ずっと昔から校庭の片隅に、1本だけ植えてある桜の木があるの。
 樹齢・百年は軽く越えていると言われている、とても大きな桜の木の下------…。

    『この木は……幾年の季節を乗り越え。
     沢山の時間(とき)の流れと共に……、
     幾人もの『出会い』と『別れ』を見てきたんだろうなぁ……』

 あたしは呼び出された場所に、少し早く来てしまい。
 大きな桜の木を見上げると、そんなことを思いながら待っていた。

 そうすることで……。
 自分の不安な気持ちを消し去ろうとしていた。
 そう無意識に……。 

「それにしても、遅いなぁ……」
 時間は過ぎ------。
 一度、気にしてしまったら……。
 名前もわからない相手を待つことが、凄く不安で落ち着かないことに気付いてしまった。
「はあ------っ」
 あたしは重い溜め息をつく。

 ドクン、ドクン、ドクン……。
 不安で鼓動が高鳴る。

(帰ろう………)
 やっぱり会いたくない。
 帰ってもいいよね。
 呼び出しといて、遅れる方が悪いんだから……。
 あたしは校門に向かって、ゆっくりと歩き出す。
 1歩、2歩……、ちょうど3歩目の足を出そうとした時------…。
「ごめん! 遅くなって……」
 あたしの後ろから、懐かしい声が聞こえて……、立ち止まる。
 少し低めの優しい声が、あたしの不安な気持ちを一瞬にして消してくれた。

 忘れない……。

 どんなに時間(とき)が経っても、忘れない。
 この声は------涼!
 あたし……夢見てるみたい。
 もういない筈の『涼』の声が聞こえるなんて……。
 ううん。
 ……夢じゃない。
 だって、確かにあたしの後ろから、涼の声が聞こえたもの。
(涼………)
 あたしは微笑みながら、ゆっくりと振り向く。

(……違う、涼じゃない……)

 あたしの前に立っている男の人は、全然別人の顔をしていた。
 ……涼じゃない。
 そうわかった、とたん。
 あたしの顔から、笑顔か消えた。

 そうだった……。
(涼は、もう……いない)
 あたし、どうかしてる。
 涼は、もう生きていないのに、声が聞こえるなんて……。
 錯覚------…。
 そう……錯覚だったの、ね。
「本当に、ごめん! 俺から呼び出しといて、遅れるなんて……」
 ---------!?
 あたしは、彼の顔をじっと見てしまう。
 錯覚なんかじゃなかった!
 この人の声が、涼の声にそっくりなの。
 驚くほど------似てる!!
「手紙くれたの……あなた?」
 あたしは、そう聞きながら彼を指差した。
「ああ。俺だよ」
 美恵の言ってたことが、見事に的中した。

 ---------------ん?

 でも手紙渡してくれた子は、A組の女の子に頼まれたって……。
 それって、どういうこと……?
「でも、女の子からって……」
 あたしが聞こうとしたら------。
「俺が頼んだんだ。あんた、手紙の相手が男からだとわかったら、会ってくれそうないからさ。姉貴から、猫の便せんまで貰ったりして……」
 彼が照れくさそうに、そう言った。
 うん。
 確かに男からの手紙だとわかってたら、あたし、絶対に会わなかった。
「あ☆ 大事な話って?」
 あたしは、突然思い出したかのように言う。
「そう、大事な話。もう想像つくと思うけど……」
(えっ、何が……?)
 あたしは意味がわからず、首を傾げる。

「……俺、君に一目惚れしたからさ。良かったら、付き合ってくれないかな?」
 彼が真顔で言った。
(告白されちゃった……)
 でも、あたし驚かなかった。
 いきなりだったけど、少しも驚かず、冷静に受け止めると、頭を下げながら。
「ごめんなさい」
 即答で、そう言い返した。
(まさか、告白されるなんて思ってもみなかったなぁ……)
 あたし、駄目なの……。
 どうしても、涼を忘れることなんて出来ない。
 涼以外の人と付き合うなんて、考えられないもの……。
「今、付き合ってる奴……いるんだ?」
 帰ろうとするあたしの後ろから、少し大きめの声で彼が問い掛けた。
「うん!」
 あたしは立ち止まり、振り返ると、そう笑顔で答えた。
 だけど……。
 作り笑顔は、すぐに消えてしまう。
 本当は嘘なのに……。
(愛した人は……もう、いない)
 そう思うと、あたし胸が苦しくなる。
「……そうか」
 彼が溜め息≪ひとつ≫ついて……。
「友達ならいいだろ? ただの友達なら……」
 彼が優しい声で、そう言った。
(友達? ただの友達なら……)
「……うん」
 あたし……気付いたら、そう返事してた。
 友達ならいいのかなって、一瞬……そう思ったから。
 彼の声が、涼に似てるから------?
 ------わからない。
 そんなこと、わからない。
 ……違う……。
 そう、違う……。
 どんなに声が似ていても、涼じゃない。
 涼は、いない。
 ただ、それだけは……わかってる。

「それじゃ、自己紹介。俺、新田卓哉。18歳。1ヶ月ほど前に≪3年A組≫に転校してきて、一目惚れした子に、たった今、告白した。まっ、そんなことくらいかな。断られたけど……」
 そう言って、彼が……。
 ううん。
 新田君が、ニコッと笑ってくれた。
「あたし……日高」
「日高由菜、18歳。3年D組。それくらいは、知ってるよ」
 新田君が、そう言って。
 あたしの顔を見ると、意味有り気に微笑んで。
「友達から……ってことで、よろしくなッ!」
 そう言った。

 えっ。

 友達から……って。
 それって、どういうことぉ……!?


≪続く≫
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